The sense of wonder-学びの楽しさ(数教育)

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お知らせ

The sense of wonder-学びの楽しさ(数教育)

当園に新たに“位取りの教具”が導入されました。

こちらはモンテッソーリ教育の数教育に含まれる教具です。幼児教育である3−6歳を対象としたカリキュラムにも含まれますが、小学部で扱われる内容でもあります。

モンテッソーリ教育の学びの豊かさを示す代表的な教具とも言えるでしょう。

今回はその素晴らしさを皆さんにご紹介したいと思います。

私たち現代人は普段何気なく数字を扱っています。今も昔も小学校の子どもたちは三桁の四則演算の計算ドリルで猛特訓したり、最近の私たち大人はネットで口座振替や電子マネーなどの数字を入力してやりとりしたりしています。

今日、数字は非常に抽象的に扱われ、具体的な目に見える姿の数を見る機会はますます少なくなっています。現金が普通だった社会から、仮想通貨とやら物が登場し、何やら大きな数字がやりとりされ世界経済に大きな影響をもたらしているということです。ますます抽象度が上がり、なんだかついていけない感じもします。

モンテッソーリ教育では、まず子どもたちが人生で初めて数の概念に触れるにあたって、その概念の原体験を大切にします。1とは何か。0とは何か。2とは何か。複数とは何か。単数とは何か。10とは何か。11と101の違いは何か。と数の概念を理解する鍵を与えることが目的です。

それは長い人生を通して、基盤となるものとなるでしょう。

さて、「1」はちっぽけな存在です。でも1はある意味では全ての基盤となります。どんな大きな数も整数である限り1の集合体です。また1はかけがえのない存在でもあり得ます。私たち人間は誰一人として同じではありません。1は特別な数です。1はここでは小さな緑の立方体で表されます。ここで扱う数のサイズは全てこの1の立方体のサイズに基づいています。この1を大きくしたり、小さくしたりすれば、全て作り直して行く必要が出てきます。

1を10個集めてみましょう。立方体を並べていくと直方体になっていきます。1が点であれば10は線ということになります。これは単に表現上のことではなく、自然の法則であり、数の現実です。「1」という「点」が集まると10という「線」になります。青い直方体で表します。

10は人間の発明した数字で人間と深い関係がある数字と言われています。指が10本だからです。10ずつ数えるのは人間にとって都合がいい方法なのです。本当は12の方が均衡の取れた数字で2・3・4・6とより多くの数で割ることができ利便性は高いのですが、人間にとって数えやすい数字は12よりも10なのです。円は360°で12と相性がいいですが、円は人間が発明したものではありません。自然界に最初からあるものです。私たちは時間に関することでは今日も12進法を使用していますね。

10が10集まると線が面になります。100と呼ばれます。線を集めると自然と面が現れるのです。これが100の姿です。ここでは赤い面で表現します。

100が10個集まると、自然と重なり均整の取れた立方体が現れます。1000です。緑の立方体で表します。緑の立方体といえば、1と同じです。

ここまでは金ビーズの活動で扱ってきた内容です。金ビーズのそれぞれと一致させて同じことを示していることを確認します。

1000である緑の立方体を10個並べると棒のような長い形が出現します。

これは英語でTen Thousandつまり10千と呼ばれ10,000とコンマによって分けて表記される数です。Ten Thousand なので10の仲間で同じ形状と色をしています。(青い棒状の形)Ten Thousandは日本語や中国語で一万と表現する数です。日本の数え方は中国から漢数字のシステムを輸入したことから、国際規格とはこの位からズレが生じます。英語で10万以上の数が話題になる時、日本人と英語話者の間で誤解が生じてしまうことがよくあるようです。

それぞれの数字での表記を確認し、バラバラにしてからマッチさせるゲームを繰り返し少しずつ覚えていきます。

一万(10,000)が10集まると十万(100,000) a hundred thousandになります。 100がついている数で、赤い板状となります。

同じパターンで永遠に続いていきます。それは本当に永遠にです。

大きな赤い平方の板が10積み重なると、100万 One Millon となります。ミリオンという新しい位が登場し、緑の立方体が出現しました。表記は1,000,000となります。

 

大きな立方体ですね。園内に置くとちょうどテーブルになりそうな、便利なサイズ感です。世界中のモンテッソーリスクールの「あるある」で、このレッスンをする時以外は、テーブルや荷物を置く収納スペースに使用されてしまうことが多いそうです。

全ての緑を重ねてみた様子。数の関係性を観察します。1、1000、1,000,000(100万)はこのようなサイズ感ですね。

100万より上の位は具体物としての用意はなく、教具としてはここでおしまいです。

ここからは上級編です。年長クラスの子どもたちの中にも興味を持っている子は多くいます。

この続きは想像の世界で続けましょう。

この1人用テーブルのサイズの100万が10個集まると、1000万が出現します。色は青です。英語ではTen Millionです。10がついているので青い棒状の形です。それは10人が座れるテーブルのようです。給食をみんなで食べるのにぴったりでしょう。(10,000,000)

 

1000万が10集まると1億となります。1億は英語では100 millionなのですね。中国式では新しい位が始まりますが英語ではまだ途中でした。1億はもはや1Fの教室に入りきれないほどです。100がつくので色は赤で板状です。(100,000,000)

 

 

 

1億が10集まると10億です。形は立方体。色は緑です。英語では1 billion。新しい位になりました。それは一軒家のようなサイズです。(1,000,000,000)

2022年11月15日に世界の人口は80億を突破したとのことです。これは戸建て8軒分に換算できそうです。または国際線の大型航空機1台分くらいでしょうか。あの緑の立方体の一粒を1と仮定したとき世界の人口80億が大型航空機1台分にピッタリ収まるとしたら、何だかちょうどいい話だという気がしますね。


幼児教育で扱うにはやや高度な印象ではありますが、興味を掻き立て、親しみを感じたり得意意識を持ったりできることが重要です。

年長クラスになると、パターンの認識や想像力も飛躍的に伸びてきます。

モンテッソーリ教育の目的は子どもたちに世界を探索するための基盤となる鍵を与えることです。また、まずは骨組みとなる外枠を与え、全体像を示し、それから細部へと進んでいくという特徴はモンテッソーリ教育のあらゆる面で見られる特徴でもあります。

知的好奇心を満たす一つの遊びのような感覚で触れながら、このような概念を想像力を発揮して扱うことは、数学の美しさや学問の楽しさの本質を知る一助となるでしょう。私たちが普段何気なく扱っている「数」というものは、実に壮大で規則正しいパターンを持ち、時に人智を超える神秘の存在でもあり、人々を虜にする魅力を秘めているものでもあるのです。