DEI(Diversity, Equity, Inclusion) 米と日本 教育に生かしたいこと

News

お知らせ

DEI(Diversity, Equity, Inclusion) 米と日本 教育に生かしたいこと

 1月、アメリカのワシントン近郊での航空機とヘリコプターの事故。67人が犠牲になりました。その時、トランプ大統領は、「連邦航空局は障害や精神疾患のある労働者を積極的に採用している。多様性を推し進めた政策のせいだ。」と主張しました。2月には、女性のスポーツにトランスジェンダーの女性参加は禁止されました。「多様性を認めない動き」、これは、昨年「初級モンテッソーリ発達支援士」の資格を取得し学んできた私にとって、そしてSDGsを推進し子どもたちにも教育する弊社にとっては、衝撃的なニュースでした。企業があっという間にDEIから一部撤退するのを見て(有名どころでは、アマゾン、フォード、ハーレー、ボーイング、ウォルマート、マクドナルドなど)、世界はどうなるのかと不安に思う方は、我々だけではないでしょう。イーロン・マスクを政府効率化省(DOGE)のトップに任命し、グイグイと公約以上の政策を進めるスピードに国民はついていけるのかと心配もします。日本はどう対応するのでしょう。

 

 昨年12月に出版された『教育にひそむジェンダー ~学校・家庭・メディアが「らしさ」を強いる~』(中野円佳著)を近頃読みました。時代はDEI、単に多様な属性のメンバーが存在すればそれでいいということではなく、マイノリティがマジョリティに同化を強いられることなく、心理的安定性を感じる環境で個々として尊重され、その力を発揮できることが重要であると言っています。企業を考えてみたときに、なぜ多様性を高める必要があったのかと言えば、「新たな知を生み出すため」「イノベーションを起こすため」「グローバルな時代に生き残るため」と掲げられ、多様性は人財という無形財産を支え、新しい価値を生む成長基盤であると言います。簡単に言えば、「慈善事業」ではなく、企業自体を強くすること。しかし現実は、根強いバイアス故、理想(DEI)とのギャップが大きく、保育所・幼稚園、学校、家庭、メディアで与えられる「らしさ」の問題が蔓延るとのこと。0歳からの育児や教育環境を通して子どもたちに与えるジェンダーイメージが作り上げる世界、これは私たち保育・教育者にも重くのしかかることは間違いありません。

 

 そのような中、先日「女性役員、生え抜きはこの2年で1.5倍に」という記事を読みました。日経新聞と民間調査会社が日本の上場企業のダイバーシティの取り組み調査をした結果です。ここでは男性中心の企業風土(=オールド・ボーイズ・ネットワーク)に戸惑いながらも奮闘する女性役員の姿がありました。

 

 ダイバーシティと少子化問題は一部近いところにあるのではと思いました。2024年の出生数は73万人弱。9年連続減少。「ダイバーシティ教育」という視点で少子化の解決策を考えるとすると、①世の中のアンコンシャスバイアスを含むバイアスを心して様々な形で取り除く行動を起こすこと、②ありのままが認められ受け入れられ、自己肯定感が育まれる幼少期の環境を創造すること、③①と②を推進したうえで、出産・育児などのライフイベントを男女平等に と考えました。冒頭のトランプ政権の「多様性を受け入れない動き」は程度の問題であって、日本はジェンダーギャップ指数が146か国中118位、米は46位とのことですから、日本は取るべきDEIを推進するでしょうし、我々教育側の人間の担う部分は大きいものと年度初めに改めて思った次第です。

 

*余談ですが、イーロン・マスクはテキサス州に念願のモンテッソーリ式の幼稚園「アド・アストラ」の開園を計画しているそうです(昨年11月認可がおりました)。同じ州に初等・中等学校のみならず、大学までの開設計画もあるようです。

 

株式会社フューチャーフロンティアーズ

代表取締役 橋本恵理