啐啄同時という考え方

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啐啄同時という考え方

 啐啄同時(そったくどうじ)という言葉をご存じでしょうか。
ひな鳥が卵の殻を破る時、内側から啐く(つつく)力と、親鳥が外側から啄く(たたく)力が同時に加わることで成功するという考え方です。
もともとは禅の世界での言葉であり、弟子が真理に目覚めようとする時、師匠がその覚醒を手助けすることをあらわしています。
教育学では有名で、子どもが自分で頑張る気持ちと、大人からのサポートが一緒になることで成長がうまくいく、という教訓を示しています。

しかし、そのタイミングが大事であり、早すぎても遅すぎてもひなの命は失われます。

また、双方のつつき方が互いに強すぎても弱すぎてもいけません。つつく所も合っていなければなりません。
啐と啄、双方の呼吸がピタッと符合した時、初めて殻が破られるのです。

 

 これと同様に、大人の手助けのタイミングが重要であり、適切なタイミングでのサポートが子どもの成長にとってとても大切なのです。まだペンが上手に持てないのに文字の書き方を教えようとすれば、それは啄くのが早すぎますし、いつまでもずっと靴を履かせてあげていたら、それはずっと啄きっぱなしで子どもの啐く機会を奪っていることになります。
 

 当園で取り入れているモンテッソーリ教育では、子どもが自分で学び、成長することが大切にされます。
保育者は子どもが自分で学べる手助けをし、自由に学べる環境を整えます。
一人ひとりの子どもたちが今まさに成長したいと思っていることに対して、必要な活動や環境を用意し方法を伝えていきます。これが、啐啄同時の考え方と似ています。

 

 またアクティブラーニング(能動的学習)は、子どもが自分で学ぶ意欲を持ち、その成長をサポートする点で関係があります。ただ受動的に教えを受けるだけではなく、子どもが自らの学習プロセスに積極的に参加し、意見交換やクリティカルシンキングを通じて深い理解を得ることが求められますが、子どもの「学びたい」という内なる意欲と、周囲の大人からの適切な支援が同時に機能することが大切です。
これはまさに啐啄同時の考え方といえます。


 啐啄同時とモンテッソーリ教育、そしてアクティブラーニングは、どれも子どもの意欲と大人のサポートが調和することで成長を促すという考え方が根本にあります。
モンテッソーリ教育だからアクティブラーニングだからと、方法論に偏ってしまうことなく、ふさわしい時に子どもたちの啐く力が発揮されるように、適切に啄く手助けができるようにしていきたいと思います。


フロンティアキッズ上馬 施設長

伊藤 由子