モンテッソーリ教育は、「自立」ということをとても重視する教育です。一般的に「自立する」とは、他者に依存しなくても(負担にならなくても)、自分がしようと思うことや自分にとって必要なことができる能力を持つこと、またそれを実行する行動力や姿勢を持つことを意味します。
3歳から6歳の子どもにおける「自立」については身の回りのことがスムーズにできること、すなわち機能的自立が主な目標となります。また、精神的な安心感を獲得して大人にいつも頼らなくても精神的に自分を保ち、元気に楽しくすごすことができることも目標となるでしょう。この安心感があるということは、非常に重要な土台であり文字通り基礎となるものなので、その後の人生に大きく影響を与えるものとなります。それは大人に、お父さんお母さんに、先生に、愛されているという確信に基づくものです。真の意味で自立をするということは、人間にとっても、大人にとっても簡単なことではありません。
さらにもっと深い意味で「自立」を掘り下げると、自立と自由の関係が出てきます。マリアモンテッソーリは「自立していなければ自由ではありません。自立を達成するためには子どもたちは幼児期の初めから、個人の自由を能動的に表現するように導かれなければなりません」と言いました。
背景としては20世紀のイタリアでムッソリーニのファシズムと対峙している社会があります。個人の自由が切実に叫ばれる社会で、単なる機能的な能力の獲得ではなく、個人の自由を表現する能動的な態度、民主主義の精神を子どものころから育む重要性に言及しています。現代の日本社会にはこのような脅威はありませんが、これからのグローバル化社会において、能動的で自立した人間性は依然としてとても重要なことに変わりありません。むしろこのような時代にこそ、自由で自立した精神が、社会での活躍に不可欠であるとも言えるしょう。
「自由は与えらるものではなく、能力によって獲得していくものである」ととあるモンテッソーリ教育者は言いました。これは子どもの発達について考える上でもとても有用なコンセプトです。2歳児の子どもに「今日はお休みだから好きなところに行って楽しく過ごしておいで」ということはできません。必要な能力をまだ獲得していないからです。能力を身に着けることは、一定の範囲においての自由を獲得することでもあるわけです。モンテッソーリ活動を始めたばかりの子どもは、最初は何をしたらいいか分からないという状態でしょう。しかし、まずは興味のある一つの活動について、指導者からやり方を細かく見せてもらいます。何度かやってみて、それを習得します。また1つ、また1つとできることが増えていきます。こうして知識と能力を増やしていき、ある程度の期間を経ると、活動時間の中で、自由に過ごし方を考え、自立して過ごせることになっていくのです。必要な能力・知識を獲得することで自由を獲得し、それが能動的な自立した姿へとつながるという一連の流れが日常的なモンテッソーリ活動の様子に実現しているというわけです。
また、あるモンテッソーリ活動は他の活動の間接的な準備にもなっています。例えばメタルインセッツ(鉄製はめこみ)でデザインを楽しんでいるうちに鉛筆をしっかりと持ち、筆圧をコントロールすることができ、意図した形に鉛筆を動かす能力を身に着けます。子どもたちは知らず知らずのうちに上達し、大人に教え込まれたのではなく、自分でできるようになったと感じることができるのです。これによって自分自身に対する自信を深めることができ、安心感を得て、精神的な自立へと向かいます。
モンテッソーリ教育は最終的には、こうした人格教育を意図しており、子どもたちの発達段階に応じて様々な分野の活動を用意しています。
Frontierkids Global School
施設長 眞島 拓也