2022年5月
入園、進級より早いもので1ヶ月が経ちました。お子さま、保護者の皆様におかれましては新しい環境に少しづつ慣れてきたことと思います。しかしながら、新型コロナウイルスの終息もまだ見えず、不安な日々を過ごされているかと存じます。園でも衛生管理に気を付けて乗り越えていけるように一層の努力をして参ります。
さて、今回は、食事の時間は感覚と密接に結びついているというお話をしたいと思います。子どもは大人や友だちと一緒に食べる中で様々な感覚を共有し、言葉を習得していきます。食べることは丸ごと感覚の体験なのです。食べものが「赤い」「丸い」といった視覚、切ると「ザクッ」と音がするなどの聴覚、「甘い」「苦い」などの味覚、さわると「ツルツル」「ザラザラ」といった触覚、かじると「シャキシャキ」などの食感、「ごはんのにおい」「青くさい」などの嗅覚。食べることには、これら五感で感じる体験が丸ごとついてきます。子どもにとって食事の時間は感じる体験の宝庫。大人や友だちと一緒に囲む食事の時間に、子どもたちは感覚を使うたくさんの体験をしながら、大人の言葉かけによって感覚を表す言葉を習得していきます。
その一つが「オノマトペ」。状態、感覚、感情などを表す言葉の中で、「ツルツル」「フワフワ」「ザクッ」「シュワッ」などの擬音語・擬態語のことを「オノマトペ」といいます。多種多様にあり、造語力の高い表現方法のため、幼児期から繰り返し、実際の体験と言葉を結びつけることで理解が進み、使えるようになる言葉です。日本語を学習する外国人にとって、わかりにくく習得がむずかしい表現の一つでもあります。日本語には、このオノマトペが豊富にあり、中でも食べものや飲食に関わるオノマトペはとてもたくさんあるのです。
オノマトペをはじめとした感覚を表す言葉がたくさん使えるようになると、話題が広がり、食事の時間が豊かになります。おいしいものを食べて、ニコッとするだけでも「おいしかった」という感覚は伝わります。しかし、どんなふうにおいしかったのかを具体的に言葉にできれば、もっとおいしさを共有することができるでしょう。例えばパンケーキ。「いいにおいがして、フワフワして、食べるとやわらかくて甘かった」などと言語化できれば、情報としても伝わり、おいしそうという共感も生まれます。
感覚の言語化は、コミュニケーション力、社会性の育ちにもつながっていくのです。
※ここで「オノマトペ」の語源について触れてみましょう。もともとは、古代ギリシア語の「onoma(名前)」と「poiein(作る)」を組み合わせた「onomatopoiia(オノマトポイーア)」に由来するとされています。ちなみに、英語では「onomatopoeia(オノマトペア)」、フランス語では「onomatopēe(オノマトペ)」と呼ばれているようです。
フロンティアキッズ加賀町 主任 境美津子