The Montessori method - ~日常生活の練習・線上歩行~
今回はモンテッソーリ活動の中の日常生活の練習の分野と線上歩行のお仕事について紹介します。
モンテッソーリ教育の中に「日常生活の練習」という教科がありますが、こちらはその一環となる活動です。日常生活の練習では、子どもたちが体を上手に使って、目標とする行動を成し遂げるための動きを習得します。それは、水を別の容器に注ぎ分けるものであったり、ボタンのつけ外しや蝶結びをしたりという基本的な物から、針と糸で裁縫をするなどの生活に必要な動作を身につけていく分野です。
いかに自分の意思をもって自分の体を動かし、調整してコントロールしていくかというところが焦点になります。
わたしたち大人は普段何気なく、自らの意思によって、体を動かし、その具合を調整しながら、目標の行動を達成しています。しかし、よく考えてみると、そのような行動を身につけることはそれ程容易なことではありません。例えば水の移し替えには、容器の重さ、水の移っていく速度、容器の傾斜など目で見て、体で感じながら頭で計算をし、タイミングよく容器を立て直して水の移動を止めます。最近ではロボット工学やAIでもこうした行動をいかに遠隔操作などで実行できるかが重要な関心事になっているようです。
こうした基本的な動きを学ぶことの他に、モンテッソーリ教育の日常生活の練習には「気品と礼儀」という社会性を伴った身のこなし、体の動かし方の学びもあります。
教室での歩き方、話し方、相手に配慮をもった言動、ふるまいなど、社会生活の上で必要な身のこなし方などを学びます。お手本をもとに、自分でやってみて、繰り返すことで、やがて自分のものになっていきます。
線上歩行は、自分の心身の意識をしっかりと合わせて、自分で自分をコントロールすること、自分を律することを経験できる活動です。
クラスのみんなで静寂を保ちながら、線の上を歩きます。バランスを保ちながら、楕円形の線の上を歩く時、速すぎて前のお友達に当たらないように、またゆっくりになりすぎて、つっかえてしまうこともないように一定のスピードを保ちながら、自分自身の意思をもって体をコントロールしていきます。またある時は、難易度を上げ、手に持った道具が落ちてしまうことがないように、さらに洗練されたバランス感覚をつかって行います。
これは呼吸を整えながら精神統一を行うヨガとも通じるところがあります。呼吸は不思議なもので普段は自分の意識を向けなくても、自律神経によって自然と行われています。しかしたちまち意識をそちらに向ければ、呼吸のペースを意識的に変更したり、止めたり、また始めたりすることができます。よく考えてみると、このことは私たちに生命の不思議さを思い起こさせ、一種の精神性(スピリチュアリティ)を感じさせるかもしれません。同時に心地の良いリラックス効果も感じられます。
当園での活動中は、リラックス効果のあるヨガの音楽などを再生して行っています。
この時間までに行っていたそれぞれのお仕事を終え、これからサークルタイムという集団活動へ移っていくという時に、一度自分の精神を統一させ、リラックスしながらも、自分を律して集中力を高めていきます。